第21回 医療制度と歴史
【21-1】国の支出の半分が社会保障?社会保障・医療費の実態と今起きている問題について【医療制度と歴史】
医療費は増える一方
https://gyazo.com/1e58b15512c0f4ba079e73f4be85fa7c
純粋に高齢化するにつれて、その分増える
https://gyazo.com/7b0b21c06613d06ad6fe583512c28472
https://gyazo.com/281f477849039fa7c70b6557ea257fd7
社会保障費は国の歳出の 35%を占める(増えているので)
その分公債費を増やしたと言える
https://gyazo.com/1ad312220a728f3883edb61b9d2a09f3
どげんかせんといかん。
では、そもそも何に使われているの?
大体は人件費、サービス業ではあるので
https://gyazo.com/9e95b17d6375e64e23cdf61613456537
https://gyazo.com/6f8963935b13120b4b4e26fbbe6345d9
【21-2】医療のビジネスモデル。医療保険のお金の流れと診療報酬【医療制度と歴史】
医療保険における保険診療の流れ
https://gyazo.com/e6967a2579e3b1ee8c7227abb7e8ddac
医療における診療報酬
https://gyazo.com/9d2e9e717f8c75cf20b9f381d6bf38f3
医科診療報酬の全体像
https://gyazo.com/4322d52e2935ae0d1007a24968313266
https://gyazo.com/bd9d3c9da9d758f1d2da781e6e117ce6
https://gyazo.com/c7fce5c6dacca5bdac2d4bc58be3ddd8
診療報酬改定の流れ、中医協との関係
https://gyazo.com/9b2a9b7dba6db3b88b9de7a69ae4d732
【21-3】戦前の日本から今の医療がどう形作られた?現代の医療制度の基礎となる考え方【医療制度と歴史】
日本国憲法の中の医療と介護制度
国民の自由と幸福追求の権利は、公共の福祉に反しない限りで認められている
日本は戦後の日本国憲法制定で、福祉国家としての道を歩み始める
1948年に医療法(医療機関と法人に関して)、医師法(医師の免許と業務に関して)、薬事法(医薬品や医療機器に関して)が制定される
1950、51年には、それぞれ生活保護法と社会福祉事業法が制定され、高齢者や障害者に対する福祉ができる土台が作られた
ここまでは自助と公助のみで、1958年に国民健康保険法が制定され、1961年4月に全国で国民皆保険が達成される、共助
共助が必要という問題意識は、19世紀末のドイツで生まれ社会保険という構想が誕生する
ドイツの社会保障制度は、世界で最初に社会保険を制 度化したビスマルクの医療保険法(1883年)、労災保険法(1884年)、年金保険法(1889年)に端を発する。 その後1942年にそこから発展させたものがイギリスのへヴァリッジ報告書
こうして、自由と幸福追求の民の世界(自助)、公共の福祉・官の世界(公助)、の間に社会保険(共助)が作られた
https://gyazo.com/6796415df40e9cd277981c4ade9fd8e9
【21-4】超高齢化社会に立ち向かう医療制度。高度な医療を提供する体制の確立から役割分担・連携へのシフトの変遷【医療制度と歴史】
戦前の国民医療法
1937年に戦時色の強まる中で、結核などの伝染病対策、戦争負傷者の対応、国民の体力向上、などを管理する厚生省が、内務省から分離
1942年、帝国議会で、国民医療法という法律が制定された
現在の医師法に引き継がれているところはあるが、ベースが病院などではなく医師になっているのは時代的なもの
大まかな流れ
1947年5月3日に日本国憲法が施行され、福祉国家への道を歩み始める
国民皆保険、フリーアクセスが明示され、人々が大病院へのアクセスができるようになり、病院需要が増大していき、医療の中心が病院になる
高度経済成長期では、急性期医療の整備
それがすぎると、超高齢化社会への対策として、慢性期や高齢者の介護を含めた効率的な対応のために、機能文化と連携が進む
諸外国では、医療情報の利活用が進み、医療情報の共有・AI・アプリなどを通じて賢い患者の育成と、それによる効率的なサービス提供、健康寿命延伸が進められている
パンデミックはこれらを無理矢理推し進める方向に進んだ
1980年代になると、高度成長期が終わり告げ、超高齢化者社会の到来が見えたことで、それに応じた医療の改善が必要になってきた
1985年から始まった医療法の大改正の流れ、超高齢化社会の到来に向けて
1985年、第1次医療法改正、都道府県単位の医療計画
一次医療圏、市区町村単位で診療所等で日常の診療を提供
二次医療圏、複数の市区町村で救急医療や一般的な入院医療を提供。必要病床数が指定された
三次医療圏、都道府県単位で大学病院レベルの高度推進医療を提供
1992年、第2次医療法改正、病院の機能ごとの役割分化と提供の効率化
特定機能病院制度
三次医療圏の担い手であり、育成機関、高度な医療を提供する機関でもあるため、大学病院とそれに準ずる病院をここに分類
療養型病床群制度
高度成長期は救急がメインだったが、高齢化社会になり長期で療養が必要なケースも増えてきた
1997年、第3次医療法改正
一次医療圏の診療所での療養強化と、二次医療圏の病院に急性期強化による分化
診療所への療養型病床群制度
都道府県内の二次医療圏の拠点への地域医療支援病院制度
超高齢化社会に対応していくためには、療養や介護と急性期の連携が必要で、紹介率とかが診療報酬制度の優遇を受けるために必要になった
2000年、第4次医療法改正
療養病床と一般病床の区分
今は、「精神病床」「感染症病床」「結核病床」「療養病床」「一般病床」の5つ
広告規制の緩和(情報量が増えていく傾向にある)
介護保険制度の導入(大改革)
医師は2年、歯科医師は1年の臨床研修が必須になる
2006年、第5次医療法改正
患者のための情報提供の推進
医療機能の分化と連携
退院時に引き続き療養が必要な場合に、福祉サービス等と連携をすること
医療の安全確保のためのシステムの導入
2014年、第6次医療法改正
病棟ごとの機能文化(病床機能報告制度)
高度急性期、急性期、回復期、慢性期、の4つを病床ごとに選択して報告
都道府県単位での地域医療構想
https://scrapbox.io/files/65e27d85aad36500232e2ef0.png
https://scrapbox.io/files/65e27db72c44e10023b43175.png
臨床研究のトップランナー育成が目的2023年4月で、15病院ある
医療事故調査制度の作成
2006年の5次改正で医療の安全の確保、が規定されてから、14年の制度開始までに色んなことがあった
2015年、第7次医療法改正
地域医療連携推進法人制度の導入
医療・介護を含む地域包括ケアシステムを支えるために、多様な機関が協力して、ヒトモノカネを流動的にして連携を強化することが目的
医療従事者への研修や、医薬品医療機器の供給、資金調達、など
医療法人制度の見直し
2017年、第8次医療法改正
介護医療院の創設
医療保険適用の病床を介護保険適用に転換
特定機能病院の管理と運営体制の強化
三次医療圏の担い手である大学病院に対して、高難易度の治療方法などに対するしんさ、管理、未承認の方法の使用、その症例報告などの管理強化
特定機能病院では、国内未承認だけど海外では承認済みの医薬品等を医師の判断で使用することができる、これを未承認適応外と呼ぶ
広告規制をインターネットにも適用
【21-5】医療事故に真剣に向き合い始めた2000年。医療安全の分水嶺となった医療事故レポート【医療制度と歴史】
1999年は世界中で医療事故に注目が集まった年、分水嶺
アメリカの学術会議の医学研究所(IOM : Institute of Medicine)が、医療事故による死亡者が、年間4.7 ~ 9.8万人に登ると好評し、世界的な注目が集まり、医療界や医療行政が医療安全に目を向けるきっかけになった
実際に新聞での単語の出現率が日本でも爆増した
https://gyazo.com/86b8d7cd53d7ab79c2d6da2d33068438
3つの大事故
心臓と肺の手術をする人を間違えて、意味ない手術をした、刑事捜査になり有罪判決に。
公立病院で消毒剤の誤注射により急死、看護師、医師、院長が有罪判決
転倒した子供が大学病院を受診したが、喉の奥に刺さった割り箸の破片が小脳にまで達していたことに気づかず、翌日死亡、無罪判決
1999年にたまたま起こったわけではなく、報道がされただけと言われている
当時の3つの問題点
医療の安全管理という考えが希薄
患者を取り違えないように、などの基礎的な安全対策が他の業界に比べて遅れていて、ルール作りや教育訓練も不十分で、初歩的なミスが多発していた
我流スタイルの治療・対応
行動化学的な研究は普及しておらず、インフォームドコンセントなどの情報共有も行われておらず、我流スタイルで患者・家族の不信感と怒りは増大
医療機関側からの内部告発が多発
虚偽のカルテ記載や、虚偽の説明などに対する内部告発が遺族に報告させる事例がたくさんあった
異状の申請数の急激な増加
1999年に公立病院で起きた事件について、医師法によって届けないとそれだけで刑事処罰になるという解釈が普及して、そこから刑事手続の件数が爆伸びした
そこから2000年代初頭に刑事処罰が増えたことで、さらに手続きも増加していった
https://gyazo.com/62de33b99c3e11fecff5ef88c1b875a0
2006年から騒がれ始めた医療崩壊
2000年から始まった介護報酬との同時改定で大幅に変わり、診療報酬が3.6%の減額改定になった
これに加えて、2025年問題が叫ばれるようになり、その対応が必要とされる この状態で、医療安全も求められたこの時期は、医療崩壊が叫ばれた
金融技術を駆使した医療事故訴訟に対する賠償金支払い対策
ハーバード大学は、金融技術を駆使して、賠償リスク管理をした
ハーバード関連病院群だけで独立して保険会社を作る
しかし、小さなグループで作ると、賠償がないと利益が出て税金を取られる、あると額が多すぎて破綻する
なので、タックスヘイブンに保険の保険として再保険会社を作って、そこに資金を集めて課税回避
加えて、賠償がさらに大きくなった時のために、再々保険契約を世界最大の保険シンジけーとであるロンドンのロイズと締結
1970年代、賠償リスクの管理といえば、国境を越えた金融ブローカーの役目だった
【21-6】医療現場における心理的安全性の重要さ。医療安全のための組織と仕組み。フールプルーフ・フェイルセーフ。【医療制度と歴史】
品質保証(QA)から品質改善(QI)へ
1991年のアメリカにQAナースという、医療における不注意やもミスを洗い出して指導する役職があった
しかし、それでも訴訟件数は数万件、賠償額は数兆円、と日本の100倍で増え続けていた
1991年にアメリカのJCAHOは、日本今なんでQAからQIに移行するように指示をした
この当時の日本の製造業における大量生産の中での品質改善は世界最高峰だった(ジャパンアズナンバーワンの時代)
犯人探しをしちゃうのは人の常であるが、そもそもがハイリスクなので、ミスのたびに処罰をすることがいいとは思えない
フール・プルーフとフェイル・セーフ
フール・プルーフである電子レンジ
間違って手を入れてマイクロ波を当てたら大火傷をするので、蓋が閉まってないとマイクロ波が出ないようになってるから、間違えようがない
フェイル・セーフである電車のブレーキシステム
電車のブレーキはバネで機械的にかかるようになっていて、電力によってブレークを解除する仕組みになっている
そのため停電などが起こると、全電車にブレーキがかかり、暴走や追突を防げる
失敗と成功の両方から学ぶ組織文化が求められる
不注意等を罰すると、言わない文化が醸成される、本来は対策をするために事故もそうだけど、起こりそうだったこと(ヒヤリハット)も含めてそれらの情報から学ぶ必要がある
それを個人の不注意の責任にして思考停止せず、その状況を分析して怒らないようなシステムを考える
すぐには全て解決しないので、継続的に情報を集めて改善活動をする、それがPDCA
ハドソン川に緊急着陸した飛行機の事故において、困難の中大事故至らなかった事例の復元力(レジリエンス)の要因を探求していく方法にも注目が集まっている
誤注射事故の事例をもとに考える
根本原因としてよく指摘されるのが、注射器、三方活栓、作業中断
注射のシチュエーションの説明
まず注射器はたくさんあるのであらゆる液体は注射器に入れて運搬される(看護師が支えて計量できて安いので)
入院中は何度も静脈注射をするので、三方活栓に繋げて静脈の中に入れる形をとっていて、体に直接打つわけではない
運ぶ時とかはこれを注射しちゃいけないとか意識してても、現場は患者から声をかけれたり、別の職員に指示をされたり、などの作業中断が往々にして発生する
対策として
重症の患者さんは、臓器から動脈、静脈、脳に至るまであらゆる場所にチューブが入っているので、それぞれのコックのサイズを変えて、間違えて接続できないようなフール・プルーフの仕組みが作られている
静脈注射一つとっても、患者、量、濃度、速度、などさまざまな変数があるので、薬剤と患者にバーコードがあり、それで機械的にチェックして間違いが怒らないようにしたりしている
それでもまだまだ。
IOMの論文では、エラーと過失を、結果論ではなく、その過程で何ができたのか、ということをもとに考えていく対策が必要と提唱した
医療は非常に不確実で、他産業と比べても圧倒的にハイリスク
長年、専門家の牙城でありそれぞれの専門的能力を重視しすぎた閣下、フールプルーフや、ファイルセーフなどの安全対策やチーム連携といったものが圧倒的に遅れている
しかし、ほかの産業と比べて圧倒的にハイリスクなので、能力が必要なのも確か。
例えば、死亡率が10%みたいな乗り物やサービスが一般に提供されることはない。しかし、医療では往々にしてある。合併症などは事前に全て判断できるものではない。
【21-7】ケインズとヘヴァリッジのコンビによる福祉国家の構想。経済と福祉を両輪で回す国家の形【医療制度と歴史】
社会保障を支える社会的・経済的条件
ケインズ・ヘヴァリッジ型福祉国家の構想
ケインズの経済財政政策とヘヴァリッジの社会保障政策を車の両輪として、経済成長を目指すモデル ヘヴァリッジの委員会は1942年に社会保険と関連サービスという報告書を作成
公的扶助、公助と社会保険、共助を組み合わせて生涯にわたる最低保障を作り出していこう、というもの
背景
病気、高齢、失業、など自分ではどうにもできないものによって労働をしてお金を稼ぐことができなくなることがある
人は一旦貧しくなると、次第に働く能力が世代を超えて損なわれ、貧困からの脱出がさらに難しくなる
そのため、税金で最低水準の生活を担保する公助のセーフティネットの上に、健康保険、年金保険、雇用保険などの社会保険の共助の仕組みを整備して、予期せぬものに対処しようという考え
高度経済成長期の日本でも1973年に田中角栄内閣は福祉元年を掲げて、老人医療無料化などを進めようとした
しかし、1980年代になると先進国で経済成長が鈍化し始め、アメリカも財政、貿易の両方で赤字を抱えていた
この頃のアメリカのレーガノミクスや、イギリスのサッチャリズムなどの改革は新自由主義と呼ばれる
国家による福祉、公共サービスを縮小し、個人の自立を旨とし、小さな政府を目指すもの
超高齢化社会を前にした医療と介護の改革
介護の改革
1988年から介護の改革も始まり、ゴールのプランが策定され、2000年にはゴールドプラン21が策定される
それまでは行政措置が一部と、民間に実費ではいれる老人ホームがあるだけだったので、金持ちしか無理だった
家族の介護力
女性が高齢者のケアの担い手となっていた
1972に勤労婦人福祉法、1985に男女雇用機会均等法、1999に男女共同参画社会基本法を経ても、実態は改善していないところも多い
2022の出生率が80万人きり、2025年問題が迫る中で、家族による介護が破綻することは目に見えていたので、共助の新たな制度として介護に関する社会保険が必要となった
社会福祉基礎構造改革と介護保険、その他
介護保険における措置から契約へ
介護保険導入前は行政措置だったが、契約に変わっていった
サービスは、在宅、施設、地域密着型の3つに大別され、介護そのものと介護予防、にも分かれている
2000年から2022年で、受給者は3.4倍に増え、509万人
電車は国土交通省が定める標準約款に従ってるらしい
成年後見人
認知症や精神障害、知的障害などで判断力が十分でない人のために、本人に変わって契約を結んだら取り消したりできる
家庭裁判所が後見人、保佐人、補助人の3つを定義してる
医療機関の応召義務、人手不足を受けて
医師法の19条第一項
診療に従事する医師は、診察治療のまとめがあった場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない、と定められている
歯科医師も同様
医師は弁護士などと同様に業務沢山を認められている
令和元年医政局長通知による解釈変更
医師の働き方改革の動きもあり、医師だけでなく医療機関としての対応も含めて整理する、とした
【21-8】人で実験するとは?ナチスの人体実験から始まった戦後の医療研究と倫理【医療制度と歴史】
人で試すということ
天然痘の事例
天然痘は致死率20-50
ジェンナー、1749-1823、は以下の言い伝えに注目し、使用人の子供で実験して成功した
牛痘はヒトでは重症化しない
牛痘に感染したヒトは天然痘に感染しない
これを改良し、1980年にWHOは天然痘の根絶を宣言した
今は倫理委員会が設置され、客観的に実験の是非が判断される
安全性と有効性を確かめる、治験、臨床試験
判断する機関
医薬品、医療機器ともに製造販売には国の承認が必要
それを判断するのが、PMDA、独立行政法人医薬品医療機器総合機構
手順
第1相臨床試験
まずは動物実験
その後少数の健康な成人や患者に投与
初めて人に投与する段階をファーストインヒューマン試験と呼ぶ
効果や副作用の量を見る
第2相臨床試験
患者の数を増やす
安全性と有効性を確認
何も入ってないプラセボも投与して効果を比較
より効果を正確に測るための2つの方法
二重盲検、ダブルブラインド
患者にも医師にもどれが本物か知らせない
ランダム化比較実験
医師の操作が入らないように割り付けも無作為にする
ヒトは皆、体格・性別・年齢はもちろん、健康度、遺伝的体質もそれぞれ違います。薬の効き目・安全性を比べるためには、ほぼ同じ体格・体質の相手に使用してみて、その効き目や安全度を比べなければなりませんが、そんな相手を探すのは大変難しいことです。そこで、条件を同じくするためにくじ引きのような方法でグループ分けを行う(ランダム化する)と、どのグループにも異なる体格・体質の人たちがほぼ均等な割合で含まれることになります。
第3相臨床試験
既存の治療薬との比較
2と同じ方法が使われる
現在は治験の規則を国際的に共通化するための、GCP (Good Clinical Practice) がある
ナチスの人体実験とニュルンベルク網領
ナチスで歴史上稀にみる残虐な人体実験が強制収容所で行われた、考えられる限りのあらゆる非人道的行為
細菌やウイルスに感染させたり
低い気圧にどれだけの人間が耐えられるか
海水を飲ませたり
毒ガスや有害な薬剤を投与したり
1945年にドイツで行われたニュルンベルク裁判で明るみに出た
1947年の判決文に、人体実験における同意と科学性に関する10項目にわたる、許容されうる医学実験、の要件がニュルンベルク綱領、と呼ばれる
第二次世界大戦以後の生命倫理の出発点
しかし、本人同意に対する考えが強く、小児や精神疾患に関しての新たな治療法開発が難しくなってしまう
そのために、世界医師会が1964年にヘルシンキ宣言を発表し、代理承認や研究参加は危険なことではなく患者にもメリットがあるという認識が広まった
倫理委員会
ベルモントレポート
哲学者や生命倫理学者、法律家などが医師と一緒に臨床研究を規制するようになった
1979年とその後の改良で生命倫理四原則が示される
自律
慈悲
正義
無危害
タスキギー事件を受けて、レイマンコントロール、専門家ではない一般の人が管理に入ること、の必要性が主張され始めた
利益相反 (COI : Conflict of Interest) の管理
他人の利益を第一にする職業や任務、フィデューシアリー (fiduciary)、受託者
ジュネーブ宣言の医師の誓いの冒頭
医師の1人として、私は、人類は奉仕に自分の人生を捧げることを厳粛に誓う。私の患者の健康と安寧を私の第一の関心事とする
特に医師や弁護士、金融機関や資産運用業務、しいては取締役や監査役、公務員も含まれる
成年後見人も
倫理的、道徳的な義務を超えて、法的な義務
専門性の高い職業ばかり
情報は常に受託者側にあり、リスクは常に依頼者側にある、この情報とリスクの非対称性がアンバランスに存在している職種
会社の取締役は、忠実義務があるため、会社の競争相手になってはならない、という競業取引規則がある
とくに、自分の会社の取引情報を使って、自分の会社の競争相手になる事はアンフェアで株主の利益を損なう
本人の利益を第一に考えるために、利益相反がある時は、その事実を本人、依頼者に告げる義務がある
医学系の学会のスライドの冒頭には、研究費をどの会社からもらったか、や、特筆して告げるべき利益相反事項があるかどうかを明示するようになっている
【21-9】日本の医療情報利活用は最下位?利活用に向けた動きとプライバシー問題との関わり【医療制度と歴史】
医療情報の利活用は何を目指しているのか
高度情報化社会の医療
インターネット技術の発展により、医学研究においても、研究室や病院の中の閉じた情報だけでなく、リアルワールドデータの有用性に気づき始める
有効性、安全性、副作用などは病院の症例を集めて書いた論文より、健康保険の診療報酬の支払いデータを分析する方が良いのでは、となってきた
ここに全ての医療の結果がある
これらの大量の情報に加えて様々なデバイスを駆使することで、自分の健康を自分で守る賢い患者になる可能性も出てきている
しかし、これには医療が日常に安全に入り込めるだけの技術と、体験、セキュリティ、などが必要になる
医療情報とプライバシー
プライバシー権の二つの考え方
自己情報コントロール権
自分でどこに情報をどういう形で情報を渡すか、取り消しまでできる
適正な自己情報の取り扱いを受ける権利
客観的な情報の取り扱いの適正さ
データを利用することは、その個人の利益も含まれているため、リスクとベネフィットに応じて考えないといけない
海外の法制度の動向
OECD最下位の日本
2017年に健康部門のアナリストがまとめた、各国の健康情報とリサーチに資する電子医療情報の準備状況、で、技術・運用、データにたいする制度整備、共に最下位レベルだった
https://gyazo.com/7763445943eff180fa2b9e482836a106
こんなに大量の医療費を投下しているにもかかわらず、そこから何も生み出せてないのは問題、唯一の残されたダイヤモンドの鉱脈とも言える
アメリカの医療情報政策の資本を定めている、とくにプライバシールールとセキュリティルール
2006年のアメリカ学術会議IOMレポートは、研究の重要性を強調した
連邦議会は、健康に関する研究を行ううえでの健康情報の果たす重要な役割を認識し、プライバシー保護が研究者のデータへの持続的アクセスを妨げてはならないことの保証を求めた
これをベースとして、HIPAAは、個人の同意のない個人情報の研究利用に道を開いた
ここでの研究とは、一般化できる知識の発展に貢献するようデザインされた系統的調査、として広い範囲をカバー
本人の同意がなくても、施設内の倫理審査委員会を通せば研究のために利用ができるように
研究機関を限定せず学術研究の自由を保障するのはEUと同じ
EUの一般データ保護規則、GDPR
学術研究を阻害しないように配慮してる
前文の4項
個人データの取り扱いは、人間に奉仕するために設計されるべきである。個人データ保護の権利は、絶対的な権利ではない。
比例原則に従い、社会におけるその機能との関係性によって判断されねばならず、かつ、他の基本的な権利とバランスの取れなものでなければならない
侵害してはならない、じゃなくてバランスなんだ、明確に絶対的権利じゃない、って言うんだけど
ただし、同意が不要といえど、その範囲については規律が必要
そこで出てくるのが、合理的な期待という考え方
本人の同意とは客観的に非合理でも自分で決めることに意味がある
しかし、合理的な期待とは、客観的合理性だけに基づいて利用判断するというもの
プライバシーやセキュリティが守られている限り、医療情報を研究や教育のために利活用することは、公衆衛生全体主義にとって利益が大きいのであれば、公共の福祉に適合するため、認められるべき
個人情報保護法と次世代医療基盤法
個人情報保護法は2003年に設立
そこから継続的に改正、インターネットなどへの対応も含めて、が行われた
基本的に同意原則で、例外もあるという形
18、利用目的と取り扱い、20-2、病歴などの要配慮個人情報、27、個人データの第三者提供
法令、人の生命身体、公衆衛生、国の機関、学術研究機関など、医療情報の利活用に関わりの深い項目は例外とされていて、範囲は広い
tanimutomo.icon 例外としていると言いつつ、本人同意が難しい場合と入っていたり、学術研究機関に限っていたりするので、どうなんだろうか
次世代医療基盤法、オプトアウトによる要配慮の利用
個人情報保護法で、匿名加工情報というものを定義している
特定の個人を識別することができないように、個人情報を加工して得られる個人に関する情報であって、当該個人情報を復元することができないようにしたもの
オプトインとオプトアウト
同意を得て利用と、要求されたら利用停止
匿名加工情報は、オプトアウトを認める法律があるが、要配慮は無理
しかし、オプトインしてもらうのは大変すぎる
2018年に施行された次世代医療基盤法で、医学研究においては、匿名加工医療情報、要配慮をオプトアウトで利用できるやうになる
電カルのデータをもらってデータベースを作って研究してもらって,健康になってもらうのが目的
匿名加工情報では、研究のニーズに応えられてない
当該個人情報を復元できないために以下ができない
希少な症例についてのデータ提供、わかっちゃうから
同一対象群に関する継続的、発展的なデータ提供、一致ができないため
薬事目的利用の前提であるデータの真正性を確保するための元データに立ち返った検証、カルテ見ても照合できないため
また、他の情報、特にNDBと連結解析したら、その前後で別の病院でやっていたことなどがわかる、が、それができない、というのもある 今後への期待
仮名加工医療情報とは、それ単体で個人を特定することはできないように、IDや氏名等の削除は必要だが、特異な医療情報に対する削除、改変は不要
https://gyazo.com/24380cde2a58e073a35172a99eac7811
匿名加工医療情報とNDB等との連携も可能にしていく
https://gyazo.com/0b51cd831cf626bc8f336bd0760f0996